大阪地方裁判所 昭和43年(わ)528号 判決 1970年4月04日
本籍
大阪市東住吉区桑津町一丁目四番地
住居
右同所
会社役員
林宗夫
明治四四年八月一五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官生駒啓出席のうえ審理をして次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月及び罰金七〇〇万円に処する。
被告人において右罰金を完納することができないときは、金二万五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を執予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、大阪市東住吉区桑津町一丁目四番地において林熔材工業所の名称で熔接材料販売業を営んでいるものであるが、所得税を免れようと企て、
第一、昭和三九年度における所得金額は二一、五六〇、八六六円、これに対する所得税額は一〇、三二二、〇〇〇円であるにも拘わらず、売上収入金の一部を除外する等の不正行為により、右所得金額中一九、七八七、四六六円を秘匿した上、昭和四〇年三月九日大阪市東住吉区東住吉税務署において、同署長に対し、所得金額一、七七三、四〇〇円、これに対する所得額が二八八、六一〇円である旨、過少に虚偽記載した同年度の所得税確定申告書を提出し、よつて同年度分の所得税一〇、〇三三、三九〇円を免れ、
第二、昭和四〇年度における所得金額は二五、二四八、三二九円、これに対する所得税額は一二、六一八、七〇〇円であるにも拘わらず、前同様の不正行為により、右所得金額中二二、六六〇、七三一円を秘匿した上、昭和四一年三月一〇日、前記税務署において、同署長に対し、所得金額が二、五八七、五九八円、これに対する所得税額が五七五、二〇〇円である旨、過少に虚偽記載した同年度の所得税確定申告書を提出し、よつて、同年度分の所得税一二、〇四三、五〇〇円を免れ、
第三、昭和四一年度における所得金額は三〇、四五七、七〇四円、これに対する所得税額は一五、六八八、六〇〇円であるにも拘わらず、前同様の不正行為により、右所得金額中二七、七六九、一三三円を秘匿した上、昭和四二年三月六日、前記税務署において、同署長に対し、所得金額が二、六八八、五七一円、これに対する所得税額が五六三、九四〇円である旨、過少に虚偽記載した同年度の所得税確定申告書を提出し、よつて同年度分の所得税一五、一二四、六六〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の取税官吏に対する質問てん末書九通並びに検察官に対する供述調書(二通)
一、田中甚吉(昭和四二年六月一五日付)、林梅子(同年九月二六日付)の収税官吏に対する質問てん末書(各一通)
一、国税査察官(収税官吏)岩佐忠男作成の被告人にかかる所得税法違反けん疑事件調査てん末書一冊(記録第二冊)
一、収税官吏岩佐忠男作成の昭和四二年五月四日付(株式会社住友銀行寺田町支店確認書)、同月六日付(同銀行天王寺駅前支店確認書)各調査てん末書
一、収税官吏斉藤昭作成の同年四月二四日付(株式会社協和銀行百済支店回答書)、同年五月二日付(株式会社福徳相互銀行本店営業部回答書)各調査てん末書
一、収税官吏藤倉繁晴、同隅田哲二郎作成の同年三月二三日付現金預金有価証券等現在高検査てん末書(各一通)
一、株式会社三菱銀行生野支店長永坂与之助、株式会社住友銀行寺田町支店長坂本行雄、同銀行天王寺駅前支店長山田陽一各作成の収税官吏あて同年三月二三日付確認書(各一通)
一、株式会社住友銀行天王寺駅前支店作成の大阪国税局あて同年四月五日付確認書
一、大阪国税局の昭和四二年四月一四日付株式会社協和銀行百済支店長、同福徳相互銀行本店営業部長あて預貯金等の照会に対する各回答書(各一通)
一、大同酸素株式会社経理部長竹中功作成の収税官吏あて同年三月二三日付確認書(記録第一二冊)
一、大阪国税局から協和醗酵工業株式会社、日本水産株式会社、日新製鋼株式会社、敷島紡績株式会社、日立造船株式会社、株式会社奥村組、大阪証券代行株式会社(二通、丸一鋼管株式会社、株式会社奥村組、ダイハツ工業株式会社分)住友信託銀行証券代行部(大同酸素株式会社分)、東京証券代行株式会社(株式会社日立製作所分)、揖斐川電気工業株式会社、中央信託銀行名古屋支店証券代行部(揖斐川電気工業株式会社分)、揖斐川アセチレン株式会社、ヤマト産業株式会社、大阪高圧ガス協同組合、新日本証券株式会社、山一証券株式会社大阪支店、大阪屋証券株式会社、野村証券株式会社蒲田支店、三績輸送機株式会社、三菱金属鉱業株式会社、三菱信託銀行証券代行部(三菱地所株式会社、三菱重工業株式会社分)、三菱電気株式会社、株式会社三菱銀行、株式会社古賀乃井に対する株式、投資信託又は配当金等の照会に対する右各会社の各回答書(但し協和醗酵と日本水産については中央信託銀行から、日新製鋼については東洋信託銀行から、敷島紡績と日立造船については東洋信託銀行株式会社大阪支店から、それぞれ回答)
一、酒井英輔(昭和四二年八月二五日付)、一枝良男(同年九月一日付)、奈良岡操(同月三〇日付)の収税官吏に対する各供述書
一、押収してある株式会社三菱銀行生野支店林関係定期預金メモ帳一綴(昭和四四年押第五一五号の一)、手形受取帳(受取手形明細簿)六冊(同号の三の一ないし六)、手形受払帳一冊(同号の二)、現金出納帳九冊(同号の四の一ないし九)、不動産売渡証書一通(同号の一〇、鈴鹿市の分)手帳一冊(同号の一六)
右の外
判示第一の事実につき
一、東住吉税務署長作成の昭和四二年一一月二九日付証明書(被告人の昭和三九年分所得税申告書写)
一、酒井英輔(同年九月二六日付)、大家末広(同月二八日付)の収税官吏に対する各供述書
一、田中秀逸作成の収税官吏あて同年九月二一日付確認書二通(記録第九冊、第一八冊)
同第二の事実につき
一、東住吉税務署長作成の昭和四二年一一月二九日付証明書(被告人の昭和四〇年分所得税申告書写)
一、酒井英輔(同年九月二六日付)、大家末広(同月二八日付)名取正(同年五月八日付)の収税官吏に対する各供述書
一、田中秀逸作成の収税官吏に対する同年九月二一日付確認書二通(記録第一〇冊第一九冊)
一、酒井英輔の収税官吏に対する同年三月二七日付供述書及び同人作成の収税官吏あて同日付確認書
同第三の事実につき
一、東住吉税務署長作成の昭和四二年一一月二九日付証明書(被告人の昭和四一年分所得税申告書写)
一、田中秀逸作成の収税官吏あて同年九月二一日付確認書二通(記録第一一冊第二〇冊)
一、酒井英輔の収税官吏に対する同年三月二七日付供述書及び同人作成の収税官吏あて同日付確認書
(法令の適用)
法律に照らすと、被告人の判示第一の所為は、昭和四〇年法律第三三号附則第三五条により、同法による改正前の所得税法第六九条第一項に、同第二及び第三の各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に、それぞれ該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人を懲役六月及び罰金七〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金二万五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、なお情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 矢代利則)